昆虫観察はじめました

都市部で見られる身近なセミ3種(アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ) 見分けに迷ったらココを確認

Tags: 昆虫, セミ, 見分け方, アブラゼミ, ミンミンゼミ, クマゼミ

夏の盛り、都市部の公園や街路樹からは様々なセミの声が降り注ぎます。その賑やかな声こそが夏の風物詩であり、私たちに季節の到来を告げてくれます。身近な存在でありながら、いざ「このセミは何という種類だろう」と考えたとき、見た目や鳴き声が似ていて判断に迷うこともあるかもしれません。

この記事では、都市部やその近郊で特によく見られる代表的なセミであるアブラゼミ、ミンミンゼミ、そして近年都市部でも増加傾向にあるクマゼミの3種に焦点を当て、それぞれの特徴と同定のポイントを分かりやすく解説いたします。これらのセミの見分け方をマスターすれば、夏の日の昆虫観察がさらに楽しくなることでしょう。

アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミの基本的な特徴

まずは、それぞれのセミの基本的な外見と鳴き声の特徴を確認しましょう。

アブラゼミ (Graptopsaltria nigrofuscata)

ミンミンゼミ (Oncotympana maculaticollis)

クマゼミ (Cryptotympana facialis)

見分けに迷ったらチェックするポイント

これらのセミはそれぞれ特徴的ですが、初心者の方には見分けが難しい場合があります。特に意識して観察したいポイントを以下に示します。

  1. 翅の色と透明度:

    • アブラゼミ: 翅は茶色で油膜状に見え、不透明です。
    • ミンミンゼミ: 翅は透明で、翅脈が緑色や黒色です。
    • クマゼミ: 翅は透明で、翅脈は黒く太めです。アブラゼミのように茶色く濁ることはありません。 この翅の透明度と色合いは、3種を見分ける上で最も分かりやすいポイントの一つです。
  2. 体の色と模様:

    • アブラゼミ: 全体的に茶褐色~黒褐色で、あまり派手な模様はありません。
    • ミンミンゼミ: 鮮やかな緑色と黒い模様の組み合わせです。
    • クマゼミ: 光沢のある漆黒色です。模様はほとんどありません。 ミンミンゼミの緑色は非常に特徴的で、遠目でも識別しやすいでしょう。アブラゼミとクマゼミはどちらも暗い色ですが、アブラゼミは茶系、クマゼミは黒系であり、光沢の有無も異なります。
  3. 体の大きさ:

    • アブラゼミとミンミンゼミは似たような大きさですが、クマゼミはそれらよりも一回り大きいことが多いです。ただし、個体差もあるため、これだけで判断するのは難しい場合もあります。
  4. 鳴き声:

    • それぞれの鳴き声は非常に特徴的です。「ジージー」(アブラゼミ)、「ミーンミンミン」(ミンミンゼミ)、「シャワシャワ/ワシワシ」(クマゼミ)と、耳で覚えるのが最も簡単な見分け方かもしれません。鳴いているセミを観察すれば、鳴き声と見た目の両方で確実に同定できます。
  5. 鳴いている時間帯:

    • ミンミンゼミは午前中に活発であることが多いですが、アブラゼミやクマゼミは日中を通して鳴きます。鳴いている時間帯も同定の参考になる可能性がありますが、気候条件などによって変動するため、決定的な要素とはならない点に注意が必要です。

セミの生態

セミは卵からかえった後、地中で数年(アブラゼミやミンミンゼミは3-5年、クマゼミはさらに長いとされることも)を幼虫として過ごし、木の根から汁を吸って成長します。十分に成長すると梅雨明け頃から地上に現れ、木に登って最後の脱皮(羽化)を行い、成虫になります。

成虫の寿命は非常に短く、わずか1週間から数週間と言われています。成虫の目的は子孫を残すことであり、オスは大きな声で鳴いてメスを呼び寄せます。交尾を終えたメスは木の枝などに産卵します。

セミの幼虫の脱け殻は、夏の昆虫観察の格好の対象となります。セミの種類によって脱け殻の形や大きさに若干の違いがありますが、慣れるまでは脱け殻での同定はやや難しいかもしれません。まずは成虫での観察から始めるのが良いでしょう。

セミ観察のコツと注意点

まとめ

都市部でよく見られるアブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミは、それぞれの翅の色や透明度、体の色、そして特徴的な鳴き声によって見分けることができます。特に、アブラゼミの不透明な茶色の翅、ミンミンゼミの鮮やかな緑と透明な翅、クマゼミの漆黒の体と透明な翅は、慣れれば容易に識別できるポイントです。

夏の暑い日、セミたちの賑やかな声に耳を傾け、その姿を観察してみてください。今回ご紹介した見分け方を参考に、それぞれのセミが持つ個性豊かな姿や生態に触れることで、身近な自然への理解がさらに深まることと思います。安全に注意しながら、夏の昆虫観察を楽しんでいただければ幸いです。