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都市部で見られるイチモンジセセリとチャバネセセリ 見分けに迷ったらココを確認

Tags: イチモンジセセリ, チャバネセセリ, セセリチョウ, チョウ, 同定

都市部の公園や草地で、素早く飛び回る小さな茶色いチョウを見かけることがあるかと存じます。その代表的な種類が、イチモンジセセリとチャバネセセリです。どちらもよく似た姿をしており、ぱっと見ただけでは見分けに迷うことが多いかもしれません。

しかし、いくつかのポイントを押さえれば、これらのチョウを正確に同定することが可能です。ここでは、イチモンジセセリとチャバネセセリの特徴と、特に似ている種類との見分け方に焦点を当てて解説いたします。

イチモンジセセリの特徴と見分け方

イチモンジセセリ(Parnara guttata)は、セセリチョウ科に属するチョウです。翅を広げた大きさは30mmから40mm程度で、都市部では夏から秋にかけて非常によく見られます。

体の色は全体的に茶褐色で、翅の表面には白い斑点が見られます。特に前翅には、いくつかの白い斑点が直線状に並んでおり、これが名前の由来である「一文字」に見えることが大きな特徴です。この「一文字」状の斑紋は、イチモンジセセリを見分ける上での重要な目印となります。

似ているチャバネセセリ(Pelopidas mathias)と比較した場合、イチモンジセセリの前翅の白い斑点は、よりはっきりと白く、直線的に並ぶ傾向があります。特に、前翅の中央付近にある長方形の斑点は、チャバネセセリでは目立たないか、あっても小さめであることが多いです。

また、後翅の裏面にも白い斑点が見られますが、個体差があります。しかし、前翅の「一文字」は比較的安定した特徴です。

チャバネセセリの特徴と見分け方

チャバネセセリ(Pelopidas mathias)もイチモンジセセリと同じくセセリチョウ科に属し、大きさもほぼ同じくらいです。都市部やその近郊で普通に見られます。

体の色はイチモンジセセリよりもやや赤みがかった茶色に見えることがあります。翅の表面にも白い斑点が見られますが、イチモンジセセリのように明確な「一文字」状には並びません。

チャバネセセリの前翅の白い斑点は、イチモンジセセリに比べて小さく、並び方も不規則な傾向があります。特に、イチモンジセセリで見られる前翅中央の長方形の大きな斑点が、チャバネセセリでは見られないか、非常に小さい点が重要な見分けポイントです。チャバネセセリの斑点は、むしろ点状で目立たないことが多いです。

後翅の裏面の白い斑点についても、イチモンジセセリと同様に個体差がありますが、前翅の斑点の形状と並び方を重点的に観察することで、区別がつきやすくなります。

生態について

どちらのチョウも、幼虫はイネ科やカヤツリグサ科の植物を食草とします。都市部では、公園の芝生や道端の雑草(エノコログサ、メヒシバなど)で幼虫を見つけることができます。成虫はさまざまな花の蜜を吸いますが、ヒガンバナやコスモスなど、秋に咲く花でよく見かけられます。

活動時期は、イチモンジセセリは通常夏から秋にかけて複数回発生し、特に秋に多く見られます。チャバネセセリも同様に夏から秋にかけて発生しますが、イチモンジセセリよりもやや早くから出現することがあります。どちらも越冬は幼虫や蛹で行うとされています。

セセリチョウ類全体に言えることですが、飛び方は非常に素早く直線的で、低い場所をテリトリーのように飛び回る習性があります。花に止まって吸蜜する際も、翅を半開きにして止まるのが特徴的です。

観察のコツと注意点

イチモンジセセリやチャバネセセリを観察する際は、イネ科の草が生えている場所や、秋に花が咲いている場所を探すと見つけやすいでしょう。公園の隅や川沿いの草地などが良いポイントです。

セセリチョウは動きが速いため、飛んでいる姿を追いかけるのは少し難しいかもしれません。花に止まって蜜を吸っている時や、葉の上でじっとしている時が観察のチャンスです。翅の白い斑点をじっくり観察してみてください。

観察時には、植物を踏み荒らしたり、昆虫を無理に捕まえたりしないよう、マナーを守りましょう。自然環境に配慮し、安全に観察を楽しんでいただければ幸いです。

まとめ

イチモンジセセリとチャバネセセリは似ていますが、前翅の白い斑点の形状と並び方に注目することで見分けることが可能です。イチモンジセセリは前翅に「一文字」状の白い斑点が並び、特に中央付近に大きな長方形の斑点が見られます。一方、チャバネセセリの斑点は小さく、一文字状には並びません。

これらのポイントを参考に、ぜひ身近な場所でセセリチョウの観察に挑戦してみてください。少しの違いに気づくことで、昆虫観察がさらに楽しくなるかと存じます。