都市部でよく見るカナブンとハナムグリ 見分けに迷ったらココを確認
身近なコウチュウ、カナブンとハナムグリ
私たちの身の回り、都市部の公園や街路樹、あるいは近郊の雑木林などで、夏の盛りによく見かける美しい緑色のコウチュウがいます。樹液に集まるカナブンと、花の上でよく見かけるハナムグリです。どちらも金属光沢のある緑色をしており、大きさも似ているため、「この虫はカナブンかな?それともハナムグリかな?」と見分けるのに迷った経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
図鑑を見ても似ているように感じられ、写真だけでは細かい違いが分かりにくい場合もあります。しかし、この二種類のコウチュウには、慣れれば簡単に見分けられるいくつかの明確なポイントがあります。今回は、カナブンとハナムグリを正確に同定するための見分け方を中心に、その生態や観察のコツをご紹介します。
カナブンとハナムグリの確実な見分け方
カナブンとハナムグリは、同じコガネムシ科に属していますが、よく見ると体の形や模様、そして飛び方に違いがあります。特に重要な見分けのポイントは以下の通りです。
1. 体の形と表面の質感
- カナブン: 全体的に扁平(平べったい)な体つきをしています。特に背中側が比較的平らに見えます。表面の緑色の光沢は、滑らかで均一な印象です。頭部と胸部の境目は滑らかにつながっており、はっきりとしたくびれはありません。
- ハナムグリ: カナブンに比べて、全体的に丸みを帯びた、ふっくらとした体つきをしています。背中側もやや盛り上がった印象です。表面の光沢はカナブンに似ていますが、前ばね(鞘翅)の付け根あたりに、小さな点刻(ごく小さなくぼみや点状の模様)が見られることがあります。頭部と胸部の間には、カナブンよりはっきりとしたくびれがあります。
2. 腹部側面の形状と模様
ここが最も分かりやすい、そして確実な見分け方のポイントの一つです。
- カナブン: 腹部の側面(体が横になったときに見える部分)は、比較的まっすぐで滑らかです。白い斑点やギザギザした構造は通常ありません。緑色の金属光沢が側面まで続いています。
- ハナムグリ: 腹部の側面には、ハッキリとしたギザギザの構造があります。さらに、このギザギザの部分に沿って、白や黄色の斑点が並んでいることが多いです。この「腹部側面の白いギザギザ」は、ハナムグリを見分けるための重要な目印となります。
3. 前ばね(鞘翅)の形状と肩の張り出し
- カナブン: 前ばねは、肩の部分が比較的角張って見えます。体全体がやや細長い印象です。
- ハナムグリ: 前ばねの肩の部分は丸みを帯びています。体全体がカナブンより幅広く、寸詰まりに見える傾向があります。
4. 飛び方
カナブンとハナムグリでは、飛ぶときの準備の仕方が大きく異なります。
- カナブン: カナブンは、硬い前ばね(鞘翅)を閉じたまま、その下にある膜状の後ばねだけを使って飛び立ちます。飛ぶ前に、前ばねを少し持ち上げるような仕草は見られますが、完全に開くことはありません。
- ハナムグリ: ハナムグリは、飛ぶ前にまず硬い前ばねを左右に大きく開きます。そして、その前ばねを開いたまま、下にある後ばねを使って飛び立ちます。飛んでいる最中も、前ばねが開いているのが特徴です。
この飛び方の違いは、実際に観察する際に非常に役立ちます。
生態に見る違い
カナブンとハナムグリは、食性や生活場所にも違いが見られます。これも同定の手がかりになることがあります。
- カナブン: 主にクヌギやコナラなどの樹液に集まります。特に夏場のよく晴れた日の午前中などに、樹液の出ている場所で他の昆虫(カブトムシ、クワガタムシ、スズメバチなど)と一緒に見られることが多いです。
- ハナムグリ: 主に様々な種類の花の蜜や花粉を食べます。バラ科、キク科、セリ科など、多くの種類の花に集まります。稀に樹液に来ることもありますが、主たる活動場所は花の上です。幼虫はどちらも腐葉土や堆肥の中で育ちます。
観察のコツと注意点
カナブンやハナムグリを観察する際は、いくつかのコツと注意点があります。
- どこを探す?
- カナブン: 夏場のクヌギやコナラの木を探しましょう。特に幹から樹液が出ている場所が狙い目です。早朝から午前中にかけて活発に活動していることが多いです。
- ハナムグリ: 夏の公園や庭、草地などで、様々な種類の花の上を探してみましょう。日中に花が開いている時間帯によく見られます。
- 観察時のマナー: 昆虫を驚かせたり、傷つけたりしないように、静かに優しく観察しましょう。無理に捕まえたり、住んでいる場所を壊したりすることは避けてください。
- 安全上の注意: 樹液にはカナブンやハナムグリだけでなく、スズメバチなどの危険な昆虫が集まっている可能性もあります。近づきすぎたり、不用意に手を出したりしないよう十分にご注意ください。高い場所の樹液を観察しようと無理に木に登るなども危険です。足元や周囲の安全を確保しながら観察を行いましょう。
まとめ
身近なカナブンとハナムグリは、緑色の金属光沢が美しく、多くの人を惹きつけるコウチュウです。見分ける際には、「腹部側面の白いギザギザがあるか」という点や、「飛ぶときに前ばねを開くか開かないか」という点が、特に役立つポイントとなります。
図鑑の写真と照らし合わせながら、今回ご紹介した形態的な特徴や生態的な違いに着目して観察することで、より正確に同定できるようになるはずです。身近な場所で見られるこれらの昆虫を通して、夏の昆虫観察をさらに楽しんでいただければ幸いです。