都市部で見られるクマバチとマルハナバチ 見分けに迷ったらココを確認
都市部や近郊で見かける大型のハチたち
春から秋にかけて、公園や庭先の花壇、街路樹の花などで、大きくて丸っこいハチを見かけることがあります。特に目につくのは、クマバチやマルハナバチの仲間でしょう。どちらも体のサイズが大きく、ブンブンと羽音を響かせながら花から花へと飛び回る姿は、とても印象的です。
しかし、どちらもふっくらとした体つきで毛深く、一見するとよく似ているため、「これはクマバチかな?それともマルハナバチかな?」と見分けるのに迷う方もいらっしゃるかもしれません。図鑑を見ても、似た写真が並んでいると、なかなか判別が難しいと感じることもあるかと思います。
この記事では、都市部や近郊でよく見られるクマバチとマルハナバチを見分けるための、具体的なポイントをいくつかご紹介します。それぞれの特徴や生態を知ることで、観察がさらに楽しくなるはずです。
クマバチとマルハナバチ、ここが見分けのポイント
クマバチもマルハナバチも、スズメバチのような細長い体ではなく、ずんぐりとして丸い体つきをしているのが特徴です。全身が毛で覆われている点も似ています。しかし、注意深く観察すると、いくつかの明確な違いが見えてきます。
1. 体の「毛深さ」と「光沢」
最も分かりやすい見分け方は、体の「毛深さ」と「光沢」です。
- クマバチ: 全身が毛で覆われていますが、特に胸の部分の毛が密で黄色っぽい(あるいは黄土色や褐色)のに対し、お腹(腹部)の背面は毛が少なく、黒く光沢があるのが大きな特徴です。金属光沢を帯びて見えることもあります。
- マルハナバチ: クマバチに比べると、全身の毛が非常によく発達しており、ふかふかとした印象を与えます。お腹の部分までしっかりと毛で覆われており、クマバチのように黒く光沢のある部分は見えません。毛の色は種類によって黄色、オレンジ色、白色など様々です。
もし写真で判別する際は、腹部の背面に注目してみてください。テカテカと光っているように見えればクマバチの可能性が高いでしょう。
2. 顔つき(特にオス)
顔つきも種類を見分ける手がかりになります。特にクマバチのオスは独特の顔をしています。
- クマバチ: オスの顔は、額から上唇にかけての広い範囲が明るい黄色をしています。メスは全身が黒っぽい毛で覆われており、顔も黒っぽいので、顔の色で雌雄を見分けることができます。ちなみに、クマバチのオスは針を持たず、人を刺すことはありません。
- マルハナバチ: オスもメスも顔全体が毛で覆われており、クマバチのオスのように顔の一部が目立つ黄色になることはありません。種類によって毛の色合いは異なります。
花に来ているハチの顔が黄色ければ、それはクマバチのオスであると判断できます。
3. 飛び方と羽音
飛び方や羽音にも違いが見られます。
- クマバチ: 体が大きいため、羽音は比較的低く、力強い「ブンブン」という音です。花の前でホバリング(空中で静止すること)が得意で、器用に蜜を吸う姿を見かけます。
- マルハナバチ: クマバチより羽音はやや高い印象です。ホバリングもしますが、クマバチほど器用ではなく、花から花へとせわしなく飛び回る姿をよく見かけます。
ただし、飛び方や羽音はあくまで参考程度と考えてください。確実な同定には、やはり体の特徴を観察することが重要です。
クマバチとマルハナバチの基本的な生態
同定の助けとなる基本的な生態についても触れておきましょう。
クマバチ(ナガハナバチ科)
- 食性: 花の蜜と花粉を食べます。ストロー状の口(吻)を花の奥深くまで差し込んで蜜を吸います。
- 生活場所: 公園、庭園、農耕地など、花のある場所に広く生息します。特に、枯れ木や木造建築物の柱など、柔らかい木材に穴を掘って巣を作る習性があります。そのため、建物の近くで見かけることも多いです。
- 活動時期: 4月頃から秋にかけて活動します。
- 特徴: オスは黄色い顔。メスは黒っぽい顔で針を持ちますが、性質は穏やかで、巣を刺激したり捕まえたりしない限り、積極的に攻撃してくることは少ないとされています。大型のハチとしては比較的おとなしい部類です。
マルハナバチ(ミツバチ科)
- 食性: 花の蜜と花粉を食べます。クマバチと同様に長い吻を持ち、深い構造の花からも蜜を得意とします。
- 生活場所: 草原、山地、市街地の緑地帯など、様々な環境で見られます。地中にあるネズミの古巣や、石の下の隙間などに巣を作ることが多いです。
- 活動時期: 春先から秋まで活動します。寒さに比較的強く、早春や晩秋にも見られることがあります。
- 特徴: 全身がふかふかの毛で覆われています。日本にはいくつかの種類がおり、体のサイズや毛の色合いが異なります(例:トラマルハナバチ、クロマルハナバチなど)。メスは針を持ちますが、こちらも比較的おとなしい性質です。
観察のコツと注意点
クマバチやマルハナバチを観察する際のコツと注意点です。
- 観察場所: 彼らは蜜や花粉を求めて花に集まります。フジ、ツツジ、アザミ、シロツメクサ、サルビアなど、様々な花で彼らの姿を見つけることができるでしょう。特にフジの花が咲く時期には、クマバチが活発に訪れているのをよく見かけます。
- 観察時のマナー: ハチを刺激しないことが最も重要です。急に近づいたり、手で払ったり、大きな音を立てたりする行動は避けてください。ハチの方も人間に関心がない場合がほとんどですので、そっと距離を置いて観察すれば安全です。
- 安全に観察するために:
- 巣の近くには絶対に近づかないでください。特にクマバチは木に穴を掘るため、古い柱や朽木などがないか注意し、もしそれらしき穴があれば距離を保ちましょう。マルハナバチの巣は地中にあることが多いので、不用意に地面の穴に近づかないようにしてください。
- 基本的に、花に集まっているハチは採餌に夢中なので、攻撃性は低いです。しかし、うっかり触ってしまったり、衣服の中に紛れ込んでしまったりすると刺される危険があります。観察に夢中になりすぎず、ハチとの間に十分な距離を確保してください。
- クマバチのオス(顔が黄色い)は針を持たないため安全です。ただし、メスとの見分けが瞬時にできない場合は、全てのクマバチに警戒心を持って接するのが賢明です。
まとめ
都市部や近郊で見られるクマバチとマルハナバチは、どちらも大型で毛深いハチですが、「腹部の光沢の有無」や「顔の色(特にオス)」に注目すると見分けることができます。クマバチは腹部が黒く光沢があり、オスの顔は黄色。マルハナバチは全身がふかふかの毛で覆われています。
彼らは身近な場所で花粉媒介者として重要な役割を果たしています。見かけたら、今回ご紹介したポイントを参考に、どちらのハチかぜひ同定に挑戦してみてください。ただし、ハチは毒針を持つ可能性があるため、観察する際は距離を保ち、刺激しないよう十分に注意して、安全に昆虫観察を楽しんでください。