昆虫観察はじめました

都市部で見られるクロアゲハとカラスアゲハ 見分けに迷ったらココを確認

Tags: クロアゲハ, カラスアゲハ, アゲハチョウ, 同定, 昆虫観察

はじめに

都市部の公園や庭先でも見かける機会のあるアゲハチョウの仲間は、その優雅な姿で私たちの目を楽しませてくれます。中でも、全身が黒っぽい姿をした大型のアゲハチョウは、一見すると同じ種類のように見えますが、実はいくつかの種類が存在します。今回は、都市部やその近郊で比較的よく見られる、クロアゲハとカラスアゲハに焦点を当て、両者を見分けるための具体的なポイントを詳しく解説します。

これらのチョウは非常に似ているため、図鑑の写真だけでは判断に迷うこともあるかと存じます。この記事では、写真では分かりにくい細部の特徴や、観察時の注意点など、より実践的な同定方法をご紹介いたします。

クロアゲハとカラスアゲハの特徴と見分け方

クロアゲハ(学名:Papilio protenor)とカラスアゲハ(学名:Papilio bianor)は、どちらもアゲハチョウ科に属し、日本の広い範囲で見られます。特に都市部では、食草であるミカン科の植物が植えられている場所などで見かけることがあります。両種は全体的な大きさや形状が似ていますが、注意深く観察すると明確な違いがあります。

1. 翅の色と光沢

最も分かりやすい違いの一つは、翅の色の光沢です。

静止して翅を広げている際に、斜めから光を当ててみると、光沢の違いがよく分かります。

2. 後翅の赤い斑紋(ベニモン)

後翅(こうし):体の後ろ側の翅)に見られる赤い斑紋(はんもん)は、両種を見分ける上で最も重要なポイントの一つです。この斑紋は「ベニモン」と呼ばれることもあります。

チョウが吸蜜や吸水のために静止し、翅を少し開いている時に、後翅の内側の模様を確認すると良いでしょう。

3. 翅脈(しみゃく)の模様

翅脈(しみゃく):翅にある筋状のもの)に沿った黒い模様の入り方も、識別の手がかりになります。

まとめ:見分けのポイント一覧

| 特徴 | クロアゲハ | カラスアゲハ | | :--------------- | :------------------------------------------ | :---------------------------------------------- | | 翅の色と光沢 | 光沢は弱め(鈍い黒色) | 強いメタリックな青緑色〜紫色の光沢がある | | 後翅の赤い斑紋 | 内側の縁にはっきりした赤い斑紋がある | 内側の縁に赤い斑紋はほとんどない(青〜紫色の斑紋が並ぶ) | | 翅脈の模様 | 翅脈に沿った黒い模様はあまり目立たない | 翅脈に沿って黒い筋状の模様が発達することが多い |

生態について

両種とも、幼虫はミカン科の植物を食草とします。都市部では、庭木として植えられたミカン、ユズ、サンショウなどの葉で見かけることがあります。成虫は様々な花の蜜を吸いますが、オスは水たまりなどで集団で吸水する姿もよく観察されます。活動時期は暖かくなる春から秋にかけてで、年に複数回発生します。

観察のコツと注意点

まとめ

都市部で見られる黒っぽい大型のアゲハチョウ、クロアゲハとカラスアゲハは、翅の光沢や後翅の赤い斑紋、翅脈の模様などを注意深く観察することで見分けることができます。特に、カラスアゲハ特有の美しいメタリックな光沢と、クロアゲハの後翅にあるはっきりとした赤い斑紋は重要な識別点となります。

この記事が、皆様が身近な場所で出会うクロアゲハとカラスアゲハを正しく同定し、さらに深く昆虫観察を楽しむための一助となれば幸いです。様々な角度から光を当ててみたり、少し離れて翅全体の模様を確認したりしながら、両種の違いを見つけてみてください。