都市部で見られるモンシロチョウとスジグロシロチョウ 見分けに迷ったらココを確認
身近なシロチョウ、どう見分けるか
春から秋にかけて、私たちの身の回りで見かける機会の多い白いチョウ。その代表格であるモンシロチョウとスジグロシロチョウは、非常によく似ているため、どちらであるか判別に迷うことも少なくないかもしれません。
図鑑の写真を見比べても、「どこが違うのだろう」と感じられた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、この2種類のシロチョウを都市部やその近郊で確実に見分けるためのポイントを、具体的な特徴に焦点を当てて解説します。
モンシロチョウとスジグロシロチョウの基本的な特徴と見分け方
まず、それぞれの基本的な外見と、見分けの決め手となる特徴を確認しましょう。
モンシロチョウ (Pieris rapae)
最も身近でよく知られているシロチョウです。
- 大きさ: 翅を広げたときの幅は約4~5センチメートル程度です。
- 全体の色: オス、メスともに、翅の地色はややクリーム色がかった白色です。真っ白というよりは、少し黄みがかった柔らかな白に見えることが多いです。
- 翅の模様:
- 前翅の先端: オス、メスともに前翅の先端部が黒っぽい色になっています。この黒い部分は、ややぼやけた印象を受けることが多いです。
- 前翅の中央の黒点: オスには通常1つ、メスには通常2つの黒い斑点があります。これらの斑点は比較的はっきりとした円形に近い形をしています。
- 翅脈(しみゃく)に沿った模様: 翅を縦横に走る筋(翅脈)に沿って、特に目立つ黒い筋は見られません。翅の白地の中に翅脈が透けて見える程度です。
- 翅の付け根(基部): 前翅の体に近い付け根の部分が、わずかに黒っぽい鱗粉で覆われることがありますが、目立つほどではありません。
スジグロシロチョウ (Pieris napi)
モンシロチョウと同様に都市部でもよく見られますが、やや林の縁や水辺に近い場所を好む傾向があります。
- 大きさ: モンシロチョウとほぼ同じ、翅を広げたときの幅は約4~5センチメートル程度です。
- 全体の色: モンシロチョウよりも白っぽく、より純粋な白色に見えることが多いです。
- 翅の模様:
- 前翅の先端: オス、メスともに前翅の先端部が黒っぽい色になります。モンシロチョウと比較すると、この黒い部分はやや濃く、内側に深く切れ込むような形状になることがあります。
- 前翅の中央の黒点: オスには通常1つ、メスには通常2つの黒い斑点があります。モンシロチョウのものとよく似ていますが、スジグロシロチョウの方がやや小さい傾向が見られます。
- 翅脈(しみゃく)に沿った模様: ここが最も重要な見分けのポイントです。 翅の表側、特に裏側を見ると、翅脈に沿って灰黒色の鱗粉が帯状に乗っています。このため、翅全体に「筋」が入っているように見えるのが特徴です。「スジグロ」の名前の由来もここにあります。この筋の濃さには個体差がありますが、モンシロチョウのように翅脈が透けて見えるだけではなく、明らかに翅脈に沿って黒っぽい線が入っているのが確認できます。
- 翅の付け根(基部): 前翅の体に近い付け根の部分が、モンシロチョウよりもはっきりと黒っぽい鱗粉で覆われる傾向があります。
見分けの決定的なポイント:翅脈の「筋」
静止している個体を観察できる機会があれば、翅脈に沿った模様を確認することが最も確実な見分け方です。
- モンシロチョウ: 翅脈に沿った黒い筋は見られません。白地に翅脈が透ける程度です。
- スジグロシロチョウ: 翅脈に沿って灰黒色の帯状の鱗粉があり、翅に「筋」が入っているように見えます。特に翅の裏側で顕著に確認できます。
この「筋」の有無が、両種を識別する上で最も信頼性の高い特徴と言えるでしょう。飛んでいる個体を見分けるのは難しいですが、静止して翅を広げたとき、あるいは翅を閉じたときに裏側が見えたら、この点をぜひ確認してみてください。
生態について
両種ともにアブラナ科の植物(キャベツ、ブロッコリー、ダイコン、ナズナなど)を食草としており、幼虫はいわゆる「アオムシ」として知られています。都市部の庭や公園、畑の周辺などでこれらの植物を見かける場所は、彼らに出会いやすい場所と言えます。
活動時期は春早くから秋遅くまでと長く、年に複数回世代を繰り返します。
観察のコツと注意点
- どこで探すか: アブラナ科の植物が生えている場所(畑、庭、公園、河原など)や、花壇の花蜜を吸いに来る場所を探してみましょう。都市部でも、マンションの植え込みや街路樹の根元に生えている雑草などもチェックポイントになります。
- 観察しやすい時間帯: 晴れた日の午前中から昼過ぎにかけて活発に活動します。
- 静止している時を狙う: 飛んでいる姿だけでは見分けが難しい場合が多いです。花で吸蜜している時や、葉にとまって休憩している時を観察するチャンスです。
- 翅の裏側を確認: 翅を閉じている時は裏側が見えます。スジグロシロチョウの特徴である翅脈の筋は、裏側でよりはっきりと確認できることが多いです。
- 観察時のマナー: チョウを驚かせたり、捕まえたりする必要はありません。少し離れた場所から、静かに観察しましょう。自然の生態を尊重し、植物や周囲の環境を傷つけないように注意してください。
まとめ
モンシロチョウとスジグロシロチョウは非常によく似ていますが、翅脈に沿った黒っぽい「筋」の有無が最も分かりやすい見分けのポイントです。特に翅の裏側でこの筋を確認することで、より確実に識別できるでしょう。
身近な場所でこの二種類のシロチョウを見かけたら、少し立ち止まって翅の模様を観察してみてください。小さな違いに気づくことが、昆虫観察の楽しさをさらに深めてくれるはずです。