都市部で見られるムラサキシジミとムラサキツバメ 見分けに迷ったらココを確認
都市部やその近郊の公園や緑地、時には住宅地の庭木などで、翅の表が光沢のある美しい青紫色をしたシジミチョウの仲間を見かけることがあります。その中でもよく似ていて、どちらか迷うことが多いのがムラサキシジミとムラサキツバメです。どちらもブナ科の常緑樹を食草とし、成虫で冬を越すという共通点も持ちますが、細部を見ると明確な見分けポイントがあります。
ムラサキシジミとムラサキツバメの基本的な特徴
ムラサキシジミとムラサキツバメは、どちらもシジミチョウ科に属するチョウです。翅を閉じているときは地味な色合いで目立ちませんが、ひとたび翅を開くと、オスは特に鮮やかな光沢のある紫色、メスは一般的に付け根付近に紫色の光沢を持つか、またはほとんど光沢がないこともあります。大きさは似ており、全長(翅を開いた幅)は3cm〜4cm程度です。
これらのチョウは、都市部やその周辺に生育するカシ類などのブナ科の常緑樹の葉を幼虫が食べること、そして成虫のまま冬を越すという生態的な特徴から、人の生活圏に近い場所でも比較的よく見られます。
ムラサキシジミとムラサキツバメの見分け方
ムラサキシジミとムラサキツバメを見分けるための最も確実なポイントは、後翅の形、特に「尾状突起(びじょうとっき)」と呼ばれる小さな突起の有無です。
- ムラサキツバメ: 後翅の後縁に、糸のように細長い尾状突起が一本あります。この突起は比較的長く、観察の際にはっきり確認できます。
- ムラサキシジミ: 後翅に尾状突起はありません。後翅の後縁は丸みを帯びています。
この尾状突起の有無は、遠目や静止している状態でも比較的確認しやすいため、最初の見分けポイントとして非常に有効です。
その他の見分けポイントとしては、翅の裏側の模様や、オスの翅の表の紫色にもわずかな違いが見られます。
- 翅の裏側の模様:
- ムラサキツバメの翅の裏側は、枯れた葉のような複雑で濃淡のある模様をしています。特に後翅の裏には、いくつかの不規則な帯状の模様が見られます。
- ムラサキシジミの翅の裏側は、全体的に灰色がかった褐色で、黒い小さな斑点が散りばめられています。ムラサキツバメのように複雑な模様や帯状の模様はありません。
- オスの翅の表の色:
- ムラサキツバメのオスの翅の表の紫色光沢は、少し鈍く、やや赤みがかった紫色に見えることがあります。
- ムラサキシジミのオスの翅の表の紫色光沢は、より鮮やかで、光の当たり方によっては青みが強く見えることがあります。
ただし、翅の表の色は光の当たり方によって見え方が大きく変わるため、見分けの決定打とするには難しい場合があります。翅の裏の模様も確認できれば確実ですが、チョウが翅を閉じてじっとしているか、裏側が見える角度で止まっている必要があります。やはり、後翅の尾状突起の有無が最も分かりやすく、信頼できる見分けポイントと言えるでしょう。
生態と観察のコツ
ムラサキシジミとムラサキツバメは、どちらも幼虫がカシ類(アラカシ、シラカシ、アカガシなど)の葉を食べます。そのため、これらの樹木が生えている公園、社寺林、緑地などで見かける機会が多くなります。
成虫は晩夏から秋にかけて多く発生し、そのまま成虫で越冬します。越冬期には、カシ類などの常緑広葉樹の葉の裏に複数個体が集まってじっとしている姿が観察されることがあります。冬の寒い時期に、葉の裏を探してみるのも面白いでしょう。
活動期には、樹木の周りを飛んだり、花の蜜や熟した果実の汁を吸っている姿が見られます。日当たりの良い場所を好む傾向があります。
観察する際の注意点としては、チョウを驚かせたり、捕まえたりしないように配慮することが大切です。特に越冬中の集団は刺激に弱いため、遠くからそっと観察するようにしてください。また、木の根元などは足元が不安定な場合があるため、観察に夢中になりすぎて転倒しないよう、安全に注意しましょう。
まとめ
都市部で出会うムラサキシジミとムラサキツバメは、一見よく似た美しいチョウですが、後翅の尾状突起の有無を確認することで簡単に見分けることができます。ムラサキツバメには尾状突起があり、ムラサキシジミにはありません。
これらのチョウは、私たちの身近な環境にあるカシ類などの樹木と深く関わって生きています。見分け方を覚えて、ぜひ公園や緑地で彼らの姿を探してみてください。翅の表の美しい輝きや、翅の裏の巧妙な擬態模様など、新たな発見があるはずです。