都市部で見られるナミアゲハとキアゲハ 見分けに迷ったらココを確認
都市部やその周辺を歩いていると、優雅に飛ぶ大きなチョウを見かける機会は少なくありません。特に黄色っぽい色合いのアゲハチョウは、私たちの目を楽しませてくれます。その中でも、最も身近な存在と言えるのがナミアゲハとキアゲハです。これら二種はよく似ていますが、注意深く観察すれば違いを見つけることができます。ここでは、ナミアゲハとキアゲハを見分けるためのポイントや、それぞれの生態、観察のコツについてご紹介します。
ナミアゲハとキアゲハ:基本的な特徴と見分け方
ナミアゲハ(Papilio xuthus)とキアゲハ(Papilio machaon)は、どちらもアゲハチョウ科に属し、黄色を基調とした美しいチョウです。全体的な色や形は似ていますが、特に翅の模様と胴体、そして幼虫の食草に違いがあります。
翅の模様:識別の一番のポイント
成虫の翅の模様を比較することが、見分ける上で最も重要です。
- ナミアゲハ: 前翅の黒い帯模様は、比較的細く、波打ったようなギザギザした輪郭を持ちます。後翅の黒い縁取りの内側には、青っぽい紋がいくつか並び、その内側に橙色の斑紋が一つあります。全体的に黒い模様が繊細で、黄色い地色が広く見えます。
- キアゲハ: 前翅の黒い帯模様は、ナミアゲハに比べて太く、縁取りが比較的滑らかです。後翅の黒い縁取りの内側には、ナミアゲハのような青い紋はほとんどなく、鮮やかな橙色の斑紋がより目立ちます。また、後翅の付け根(体に近い側)にある黒い模様が、ナミアゲハよりも発達している傾向があります。全体の印象として、ナミアゲハより黄色味が強く、黒い模様が力強く感じられることがあります。
胴体(胸部・腹部)の色
これも比較的簡単な見分け方です。
- ナミアゲハ: 胴体(胸部と腹部)は全体的に黒く、黄色い斑紋が点々と入る程度です。
- キアゲハ: 胴体は黒いですが、黄色い筋状の模様が発達しており、特に胸部の側面などに黄色い部分が目立ちます。
幼虫の食草:生息環境のヒント
成虫の同定ではありませんが、観察する場所や時期によっては幼虫を見かけることもあり、その食草を知っているとどちらのチョウがいるかを推測する手助けになります。
- ナミアゲハ: 主にミカン科の植物を食べます。柑橘類の葉(ユズ、ミカン、サンショウなど)をよく見かけます。都市部の庭木や公園に植えられた柑橘類で幼虫が見つかることが多いです。
- キアゲハ: 主にセリ科の植物を食べます。ニンジン、パセリ、ミツバ、セリ、アシタバなどが食草です。畑や河川敷、少し開けた草地などで見かけることが多い傾向があります。
幼虫も見た目が異なりますが、ここでは成虫の見分けに絞って解説します。
ナミアゲハとキアゲハの生態
どちらのチョウも、暖かい季節に活動が見られます。春から秋にかけて複数回発生し、都市部でも公園の花壇や庭先、あるいはベランダのプランターなどに飛来して花の蜜を吸っている姿をよく観察できます。
活動時間は日中で、特に晴れた日の午前中から午 後にかけて活発に飛び回ります。オスは縄張りを持つ性質があり、時には速いスピードで飛んで他のオスを追い払う様子が見られます。メスは食草を探してゆっくりと飛び、葉に卵を産み付けます。
観察のコツと注意点
ナミアゲハやキアゲハは比較的大きく、警戒心もそれほど強くないため、観察しやすいチョウと言えます。
- 観察に適した場所: 公園の花壇、庭、河川敷、畑の近くなど、食草となる植物や蜜源となる花が多い場所を探してみましょう。特に、アゲハチョウが好むとされるアベリア、ブッドレア、サルビアなどの花にはよく飛来します。
- 近づき方: 急な動きは避け、ゆっくりと近づきましょう。チョウが吸蜜に夢中になっている時は、比較的近くまで寄れることがあります。ただし、あまりに近づきすぎると逃げてしまうため、適度な距離を保つことが大切です。
- 撮影のヒント: 翅を広げている静止状態を狙うと、模様がよく見えて撮影しやすいです。吸蜜中は翅を立てていることが多いですが、その姿も美しいです。
- 観察のマナー: チョウを捕まえたり、翅に触れたりすることは避けましょう。植物を傷つけないように注意し、自然のままの姿を観察することを心がけてください。特に幼虫や卵を見つけても、持ち帰らずにそっと見守ることが大切です。
まとめ
ナミアゲハとキアゲハは、どちらも都市部で身近に見られる美しいアゲハチョウですが、前翅・後翅の黒い帯の太さや形、後翅の青・橙色の斑紋の様子、そして胴体の黄色い模様の入り方で見分けることができます。また、幼虫の食草が異なるため、見られる環境からも推測するヒントが得られます。
これらのポイントを知っていれば、次に黄色いアゲハチョウを見かけた時に、「これはナミアゲハかな? それともキアゲハかな?」と考えながら観察する楽しみが増えることでしょう。ぜひ、お近くでじっくりと観察してみてください。