都市部で見られるセスジスズメとキイロスズメ 見分けに迷ったらココを確認
都市部やその近郊にお住まいでも、夜間の街灯や自動販売機の明かりの下で、素早く羽ばたく大型のガを目にすることがあるかと存じます。その中に、セスジスズメやキイロスズメといったスズメガの仲間がいる可能性は少なくありません。これらのスズメガは比較的大きく力強い姿をしており、観察の対象としても興味深い種類ですが、特にセスジスズメとキイロスズメはよく似ており、見分ける際に迷われる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、都市部でよく見られるセスジスズメとキイロスズメに焦点を当て、両種を正確に見分けるための具体的なポイントを解説します。形態の特徴から生態まで、同定に役立つ情報を提供できれば幸いです。
セスジスズメとキイロスズメの基本的な紹介
セスジスズメとキイロスズメは、どちらもチョウ目スズメガ科に属するガです。成虫は大型で、ずんぐりとした体つきをしており、ホバリングしながら花の蜜を吸う姿がハチドリのように見えることがあります。夜行性で、灯火に飛来することが多いため、街中でも比較的容易に観察の機会があります。
両種は幼虫も特徴的で、大型で派手な色や模様を持つことが多く、サトイモ科やヤマイモ科などの植物の葉を食べて成長します。
セスジスズメとキイロスズメ 見分け方のポイント
セスジスズメとキイロスズメは、全体的なシルエットや活動する場所が似ているため、一見区別がつきにくいかもしれません。しかし、詳しく観察すると、いくつかの重要な違いを見つけることができます。
1. 前翅の模様
最も分かりやすい見分けポイントの一つは、成虫の前翅の模様です。
- セスジスズメ: 前翅の地色は褐色やオリーブグリーンで、翅の付け根から先端にかけて白い筋が目立ちます。この白い筋が「背筋」のように見えることから名前がついています。この筋は比較的はっきりしており、他の模様とのコントラストが明確です。
- キイロスズメ: 前翅の地色は黄色みがかった褐色から黄褐色です。セスジスズメのような目立つ白い筋はありませんが、翅全体に複雑な褐色のまだら模様があります。特に翅の中央付近には、暗い色の帯状の模様が入ることが多いです。全体的に、セスジスズメよりも黄色っぽく、模様が細かい印象を受けます。
静止している個体を上から観察する際は、まずこの前翅の模様に注目してみてください。
2. 腹部の側面の模様
体を横から観察できる機会があれば、腹部の側面の模様も良い判断材料になります。
- セスジスズメ: 腹部の側面には、黒と白(または薄いピンク色)の縞模様が交互に入ります。この縞模様はかなり規則的で明瞭です。
- キイロスズメ: 腹部の側面も、セスジスズメと同様に黒と黄褐色の縞模様が入りますが、セスジスズメほど明瞭で規則的ではないことが多いです。また、全体的に黄色みが強いです。
3. 後翅の色
普段は前翅の下に隠れていますが、飛翔時や驚いた際にちらりと見える後翅の色も異なります。
- セスジスズメ: 後翅の大部分は鮮やかなピンク色をしています。縁の部分は黒褐色です。
- キイロスズメ: 後翅の大部分は黄色または黄褐色です。縁の部分は褐色です。
後翅の色は、捕獲して確認するのではなく、飛んでいる時や羽ばたいている時に偶然見えた場合に参考にする程度が良いでしょう。
4. 大きさ(目安)
個体差がありますが、一般的にキイロスズメの方がセスジスズメよりもやや大型になる傾向があります。ただし、これも絶対的な基準ではなく、あくまで目安としてください。
生態と観察のコツ
セスジスズメとキイロスズメは、どちらも春から秋にかけて活動します。特に夏から初秋にかけて多く見られます。
- 成虫: 主に夜間に活動し、サルビア、アサガオ、チョウセンアサガオ、ツリフネソウなど、筒状の花の蜜を吸います。街中では、夜間のコンビニエンスストアや自動販売機の明かりに飛来しているのをよく見かけます。日中は植込みの葉の裏などで静止していることがあります。
- 幼虫: セスジスズメの幼虫はサトイモ科(サトイモ、コンニャクなど)、ヤマイモ科(ヤマイモなど)、ツリフネソウ科(ホウセンカなど)の葉を、キイロスズメの幼虫はヤマイモ科やサトイモ科の葉を食べます。幼虫は大型で、体の後部に突起(尾角)を持つことが特徴です。緑色や褐色のものがおり、斜めの模様や眼状紋を持つなど、種類によって特徴的な模様があります。食草を探すと見つけられることがあります。
観察時の注意点
セスジスズメやキイロスズメは、毒を持っていませんので、基本的には安全に観察できます。しかし、大型で急に飛び立つと驚くことがあります。また、夜間の観察は足元に注意が必要です。灯火に飛来している個体を観察する際は、多くの虫が集まっているため、他の虫に注意したり、周囲の迷惑にならないように配慮したりすることも大切です。捕獲はせず、そっと自然な姿を観察することをお勧めします。
まとめ
都市部で見られるセスジスズメとキイロスズメは、以下のポイントで区別できます。
- セスジスズメ: 前翅に目立つ白い筋があり、腹部側面の白黒縞模様が明瞭、後翅はピンク色。
- キイロスズメ: 前翅は黄褐色で複雑なまだら模様があり、腹部側面の縞模様はセスジスズメほど明瞭でなく黄色みが強く、後翅は黄色。
これらの特徴を意識して観察することで、両種を見分けることができるようになります。身近な場所にも興味深い昆虫はたくさん生息しています。ぜひ、セスジスズメやキイロスズメを探して、その姿をじっくり観察してみてください。