都市部で見られる身近なバッタ3種 見分けに迷ったらココを確認
都市部やその近郊にお住まいであれば、公園や河川敷、あるいは少し背の高い草が生えている場所で、ピョンと跳ねるバッタの姿をよく目にされることと思います。私たちの身近にいるバッタの仲間にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴がありますが、遠目にはどれも同じように見えてしまい、同定に迷うことも少なくないでしょう。
この記事では、都市部や近郊で特によく見られる代表的なバッタである、オンブバッタ、ショウリョウバッタ、トノサマバッタの3種に焦点を当て、それぞれの詳しい特徴と、どのように見分ければよいのかを解説いたします。図鑑だけでは判断に迷う点についても、具体的なポイントを挙げて説明しますので、ぜひこれからの昆虫観察にお役立てください。
オンブバッタの特徴と見分け方
オンブバッタは、都市の公園や庭先など、私たちの生活圏で最も身近に見られるバッタの一つです。名前の通り、メスの背中にオスが乗り(オンブし)ている姿をよく観察できます。
- 体型と色: 体長はメスで40mm程度、オスはそれよりずっと小さい25mm程度です。全体的に細長い体型をしており、色は緑色型が多いですが、褐色型も見られます。
- 頭部と触角: 頭部は特に尖ってはいませんが、比較的平らな印象です。触角(しょっかく:頭部にある感覚器官)は、他のバッタに比べて明らかに短く、これがオンブバッタを見分ける大きな特徴となります。
- 翅: 翅は後脚の先よりもわずかに短いか、ほぼ同じくらいの長さです。
- 前胸背板: 前胸背板(ぜんきょうはいばん:頭部のすぐ後ろの背中部分)は、中央に一本の隆起線があり、やや凹凸があります。
ショウリョウバッタの特徴と見分け方
ショウリョウバッタも、都市部から郊外にかけて広く見られる大型のバッタです。特に夏になると、シュルシュルという特徴的な音を立てて飛ぶ姿が観察できます。精霊流しの頃に見られることから「精霊飛蝗(ショウリョウバッタ)」の名が付いたという説があります。
- 体型と色: メスは体長70mmを超える大型になることがあり、オスでも50mm程度になります。オンブバッタよりもさらに細長く、流線形に近い体型をしています。色は緑色型と褐色型がいます。
- 頭部と触角: 最大の特徴は、長く前に突き出した尖った頭部です。この「顔」を見れば、ショウリョウバッタであるとすぐにわかります。触角は非常に長く、後脚の付け根あたりまで伸びます。
- 翅: オスの翅は後脚を大きく超えて非常に長く、メスの翅も後脚より長いです。飛ぶ力が強いのも特徴です。
- 前胸背板: 前胸背板には中央に一本の隆起線があります。
トノサマバッタの特徴と見分け方
トノサマバッタは、広々とした草地や河川敷などでよく見られる、がっしりとした体格の大型バッタです。時に大発生して農作物に被害を及ぼすこともありますが、普段見かけるのは単独でいる個体が多いでしょう。
- 体型と色: メスは体長60mm程度、オスは40mm程度と、ショウリョウバッタに匹敵する大きさです。オンブバッタやショウリョウバッタに比べて幅広で、がっしりとした印象の体型です。色は緑色型と褐色型がいます。
- 頭部と触角: 頭部は丸みがあり、他の2種のように尖っていません。触角はオンブバッタより長く、ショウリョウバッタより短い、中程度の長さです。
- 翅: 翅は後脚を少し超える程度の長さで、飛び立つと後翅にある黒い帯状の模様が見えることがあります。
- 前胸背板: 前胸背板は、中央にX字状あるいはそれに近い形の隆起線があることが特徴です。
3種の見分けのポイントまとめ
以下の点に注目すると、3種を見分けるのに役立ちます。
- 頭部の形: 尖っているか(ショウリョウバッタ)、丸みがあるか(トノサマバッタ)、平らな感じか(オンブバッタ)。
- 触角の長さ: 非常に長いか(ショウリョウバッタ)、短いか(オンブバッタ)、中程度か(トノサマバッタ)。
- 体型: 細長いか(オンブバッタ、特にショウリョウバッタ)、がっしりしているか(トノサマバッタ)。
- 翅の長さ: オスで後脚を大きく超えるか(ショウリョウバッタ)、後脚より長いか(ショウリョウバッタ)、後脚と同じか少し短いか(オンブバッタ、トノサマバッタ)。
- 前胸背板の模様: 中央に一本線か(オンブバッタ、ショウリョウバッタ)、X字状の隆起があるか(トノサマバッタ)。
- 行動: メスの背にオスが乗っているか(オンブバッタ)。飛んだ時にシュルシュル音を立てるか(ショウリョウバッタ)。飛んだ時に後翅に黒い帯が見えるか(トノサマバッタ)。
3種のバッタの生態
これらのバッタは、主にイネ科やその他の草本植物の葉を食べます。活動時期は一般的に夏から秋にかけてで、成虫は晩秋まで見られます。卵は土の中にまとめて産み付けられ、越冬して翌年の春から初夏にかけて孵化し、幼虫は脱皮を繰り返して成長します。オンブバッタのメスはあまり遠くまで飛ばない傾向がありますが、ショウリョウバッタやトノサマバッタは比較的よく飛びます。
観察のコツと注意点
- 探す場所: 3種とも、日当たりの良い草むら、特にイネ科の草丈が30cm以上あるような場所で見つけやすいです。公園、河川敷、空き地などを探してみましょう。
- 近づき方: バッタは警戒心が強いので、急に近づくとすぐに跳んで逃げてしまいます。ゆっくりと、しゃがむなどして体を低くしながら観察すると、驚かせにくいです。
- 観察のマナー: むやみに捕まえたり、傷つけたりしないようにしましょう。観察後はそっと見守り、元の場所に戻るのを待つか、自然な形で立ち去ります。
- 安全上の注意: 夏場の観察は熱中症に注意し、帽子を着用し水分補給を心がけてください。草むらには蚊などの虫や、稀に危険な生物がいる可能性もありますので、長袖・長ズボンを着用し、虫よけスプレーを使うなどの対策を取りましょう。
まとめ
都市部や近郊で見られるオンブバッタ、ショウリョウバッタ、トノサマバッタは、一見似ていますが、頭部の形、触角の長さ、体型、翅の長さ、前胸背板の模様といった点で確実に見分けることができます。これらのポイントを意識して観察することで、それぞれのバッタが持つ個性や生態の一端に触れることができるでしょう。
まずはそれぞれの特徴を頭に入れて、実際に草むらで探してみてください。見分ける楽しみが増え、昆虫観察がさらに豊かな時間になることを願っております。