都市部で見られる身近なカマキリ3種(オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリ)見分けに迷ったらココを確認
身近なハンター、カマキリの見分け方
私たちの住む都市部やその近郊でも、注意深く見れば様々な昆虫に出会うことができます。その中でも、堂々とした姿で獲物を待ち伏せるカマキリは、多くの方にとって身近で魅力的な存在ではないでしょうか。カマキリにはいくつかの種類がありますが、図鑑で調べても「似ているな」「これかな?」と迷うことがあるかもしれません。
特に都市部でよく見かけるのは、オオカマキリ、チョウセンカマキリ、そしてハラビロカマキリの3種です。これらの種は大きさや色合いが似ている場合もあり、慣れないうちは判別が難しいと感じるかもしれません。
この記事では、これら3種のカマキリに焦点を当て、図鑑の写真だけでは分かりにくい形態の特徴や、生態に基づいた見分け方のポイントを詳しく解説します。これを読めば、目の前にいるカマキリがどの種類なのかを自信を持って同定できるようになるはずです。
オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリの特徴と見分け方
カマキリの同定には、体全体のシルエットだけでなく、特定の部位の色や形、模様を詳しく観察することが重要です。ここでは、3種それぞれの特徴と、特に注目すべき見分けのポイントを解説します。
オオカマキリ (Tenodera aridifolia)
日本のカマキリの中では大型で、体長はオスが70〜80mm、メスは80〜90mmほどになります。体色は緑色型と褐色型がいます。
- 見分け方のポイント:
- 鎌(前脚)の内側付け根部分: ここに赤褐色の大きな紋があります。これがオオカマキリを見分ける際の最も分かりやすい特徴の一つです。
- 前胸背(首のように見える細長い部分): 比較的長く、幅は狭めです。
- 腹部: 成熟したメスは腹部が非常に幅広くなります。
- 後翅(内側の膜状の翅): 半透明で、先端近くが少し黒っぽくなる傾向があります。
堂々とした体格と、鎌の内側の赤褐色の紋が印象的な種類です。
チョウセンカマキリ (Tenodera angustipennis)
オオカマキリに非常によく似ていますが、体長はオスが60〜70mm、メスが70〜80mmほどと、やや小型です。体色も緑色型と褐色型がいます。
- 見分け方のポイント:
- 鎌(前脚)の内側付け根部分: ここに橙色の紋があります。オオカマキリの赤褐色に対して、チョウセンカマキリは橙色である点が重要な違いです。
- 前胸背: オオカマキリに比べて、同じ体長であれば短い傾向があります。前胸背の長さと体長の比率が、オオカマキリと見分ける際の参考になります。
- 後翅(内側の膜状の翅): 半透明で、無色に近いことが多いです。オオカマキリのように先端が黒っぽくなることは少ないです。
オオカマキリと形態が酷似しているため、鎌の内側の色や前胸背の長さで注意深く見分ける必要があります。
ハラビロカマキリ (Hierodula patellifera)
他の2種とは少し雰囲気が異なります。体長はオスが50〜65mm、メスが55〜70mmほどと、やや小型です。体色は鮮やかな緑色型が多いですが、褐色型もいます。
- 見分け方のポイント:
- 腹部: 最大の特徴は、その名の通り腹部が幅広く平たいことです。特にメスで顕著です。
- 前胸背: 短く、幅広です。鎌(前脚)のすぐ後ろの部分も比較的太く見えます。
- 翅: 背中側から見ると、短い前胸背と幅広の腹部に対して、翅が腹部の端まで届かないように見えることが多いです(特にメス)。また、前翅の付け根近くに白い点状の紋がある場合が多く、これも見分けの大きな手がかりになります。
- 鎌(前脚)の内側付け根部分: オオカマキリやチョウセンカマキリのような大きな紋はありません。黄色や黄緑色で、黒い小さな点がある程度です。
ずんぐりとした体形と、幅広の腹部、そして白い紋が特徴的な種類です。樹上で見かけることが多い傾向があります。
3種の見分けのポイントまとめ
| 特徴 | オオカマキリ | チョウセンカマキリ | ハラビロカマキリ | | :--------------------- | :----------------------- | :------------------------- | :--------------------------- | | 体長 | 大型(オス70-80mm、メス80-90mm) | やや小型(オス60-70mm、メス70-80mm) | 小型〜中型(オス50-65mm、メス55-70mm) | | 鎌の内側付け根 | 赤褐色の大きな紋 | 橙色の大きな紋 | 目立つ紋なし(黄色や黄緑色) | | 前胸背(首の部分) | 長く細め | オオカマキリより短い | 短く幅広 | | 腹部 | 長く、メスは幅広になる | 長く、オオカマキリよりやや細い | 幅広く平たい | | 翅 | 後翅先端がやや黒っぽい | 後翅はほぼ透明 | 前翅に白い点があることが多い |
これらのポイントを複数組み合わせて観察することで、より正確に同定することができます。特に、鎌の内側の色、前胸背の長さ、そして腹部の幅や翅の紋に注目してみてください。
カマキリの生態
カマキリは完全肉食性の昆虫で、飛んでくる昆虫や近くを通りかかった昆虫などを、発達した鎌状の前脚で素早く捕らえて食べます。他のカマキリや、自分より大きな昆虫を捕食することもあります。
- 生息場所: 草丈の高い草むら、庭木の葉の上、公園の植え込みなど、獲物となる昆虫が多く生息している場所で見られます。ハラビロカマキリは樹上性の傾向がやや強いとされます。
- 活動時期: 成虫は主に夏から秋にかけて見られます。秋には交尾を行い、メスは「卵鞘(らんしょう)」と呼ばれる泡状の塊の中に卵を産み付けます。
- 越冬: 卵鞘の状態で冬を越し、翌年の春に幼虫が孵化してきます。幼虫は親と同じように他の昆虫などを捕食しながら成長し、脱皮を繰り返して夏に成虫になります。
観察のコツと注意点
カマキリは待ち伏せ型のハンターなので、動き回る他の昆虫に比べて比較的見つけやすいかもしれません。
- どこを探すか: 草むらの葉の先端や茎、木の枝などで、じっと獲物を待っている姿を見かけることが多いです。
- 見つけ方のヒント: 鎌を構えて静止していることが多いので、注意深く周囲の葉や枝を観察してみてください。風で揺れる葉とは違う、カマキリ特有の静止の仕方をしていることがあります。
- 観察時のマナー: カマキリは自然の中で暮らしています。触りすぎたり、無理に捕まえたりせず、その場で静かに観察するように心がけましょう。特にメスは産卵前や産卵後で体力を消耗している場合もあります。
- 安全に観察するために: カマキリの鎌は鋭く、掴むと挟まれることがあります。毒はありませんが、怪我をする可能性があるので、素手で不用意に触れるのは避けた方が安全です。観察は目で楽しみましょう。
まとめ
都市部や近郊でよく見られるカマキリ、オオカマキリ、チョウセンカマキリ、ハラビロカマキリの3種は、一見似ていますが、鎌の内側の色、前胸背の長さ、腹部の幅や翅の紋といった特徴をよく観察することで見分けることができます。
これらの特徴を把握していれば、目の前のカマキリがどの種類なのかをより正確に同定できるようになり、昆虫観察がさらに楽しくなるはずです。図鑑と実際のカマキリをじっくり見比べながら、ぜひ同定にチャレンジしてみてください。身近な場所にも、多様な昆虫たちの世界が広がっています。