都市部で見られるヤマトシジミとツバメシジミ 見分けに迷ったらココを確認
都市部の公園や庭先、空き地などで、小さな青いチョウが素早く飛んでいるのを見かける機会は多いかと思います。その代表格が、ヤマトシジミとツバメシジミです。どちらも身近でよく似ているため、見分けに迷うことも少なくありません。ここでは、この2種類のシジミチョウを正確に同定するためのポイントを、写真だけでは分かりにくい細部まで含めて解説します。
ヤマトシジミとツバメシジミの基本的な特徴
ヤマトシジミもツバメシジミも、翅を開いたときの大きさは2cmから3cm程度で、都市部で見られるチョウとしては比較的小型です。オスは翅の表面が青紫色、メスは黒っぽい色をしていることが多いですが、光の当たり方や個体差もあります。
一見すると非常によく似ていますが、注意深く観察することで確実に見分けることができます。
確実に見分けるポイント:尾状突起の有無
ヤマトシジミとツバメシジミを見分ける上で、最も分かりやすく決定的な違いは、後翅にある「尾状突起(びじょうとっき)」の有無です。
- ヤマトシジミ: 後翅に尾状突起がありません。後翅の外縁は滑らかな曲線を描いています。
- ツバメシジミ: 後翅に細長い尾状突起が1本(まれに2本)あります。この突起は翅の後ろ側、肛角(こうかく:後翅の後端の角)付近から糸のように伸びています。
この尾状突起は、翅を閉じて止まっているときでも確認できます。チョウが止まったら、翅の後ろ側に細い突起があるかどうかを探してみてください。
翅の裏側の模様も同定のヒントに
翅の裏側の模様も、両者を見分ける際の参考になります。特に、後翅の裏側にある黒い斑紋の配置や、それに伴う橙色や青色の斑紋に違いが見られます。
- ヤマトシジミ: 翅の裏側は灰色がかった白色で、黒い斑紋が比較的はっきりと並んでいます。後翅の肛角付近には、小さな橙色の斑紋が現れることがありますが、青色の斑紋は通常ありません。
- ツバメシジミ: 翅の裏側も灰色がかった白色ですが、黒い斑紋はヤマトシジミに比べてやや小さく、不明瞭な傾向があります。そして最も重要なのは、尾状突起の根元に鮮やかな橙色の斑紋があり、その内側に(翅の中央寄り)メタリックな青色の斑紋がある点です。この橙色と青色のセットの斑紋は、ツバメシジミの特徴的なサインとなります。
チョウが翅を閉じて止まっている際に、この翅裏の模様を観察できると、より確実に同定できます。特にツバメシジミの鮮やかな橙色と青色の組み合わせは、ヤマトシジミにはない特徴です。
その他の参考ポイント:翅の形や飛び方
- 翅の形: 細かい点ですが、ツバメシジミの方が後翅の肛角部分がわずかに尖っているように見えることがあります。これは尾状突起があることと関連しています。
- 飛び方: どちらも素早く飛びますが、ツバメシジミの方が比較的活発に飛び回る傾向があると感じる観察者もいます。ただし、これは個体差や状況によるため、同定の決定的なポイントとしては使えません。
ヤマトシジミとツバメシジミの生態
同定の助けとなる基本的な生態情報もご紹介します。
- 活動時期: どちらも春から秋にかけて、長い期間にわたって見られます。年に数回発生を繰り返します。
- 食草: 幼虫が食べる植物(食草)が異なります。
- ヤマトシジミの幼虫は、主にカタバミの仲間(オッタチカタバミ、アカカタバミなど)を食べます。都市部の道端や公園で普通に見られる雑草です。
- ツバメシジミの幼虫は、シロツメクサやアカツメクサなどのマメ科植物を食べます。こちらも都市部の緑地や河原などでよく見られます。 食草が見つかる場所を探すと、それぞれのチョウに出会いやすいでしょう。
- 生活場所: 公園、河原、空き地、庭、街路樹の植え込みなど、日当たりが良く食草がある場所に多く生息しています。
観察のコツと注意点
- 探す場所: カタバミやマメ科の植物が生えている場所を探してみてください。晴れた日の日中に活発に活動します。
- 観察のタイミング: 花の蜜を吸っているときや、地面に止まって吸水しているとき、葉の上で翅を広げたり閉じたりして日光浴をしているときなどが、比較的ゆっくり観察しやすい機会です。
- 写真撮影: 小型で素早く動くため、ピントを合わせるのが難しいことがあります。望遠機能を使うよりは、ゆっくりと近づいて、可能な限りチョウの近くで撮影を試みる方が、翅裏の模様などを鮮明に写しやすいかもしれません。
- 観察のマナー: チョウが止まっている葉や花を揺らしたり、追いかけ回したりせず、静かに観察しましょう。植物を踏み荒らさないよう足元にも注意が必要です。
まとめ
ヤマトシジミとツバメシジミの見分けは、まずは後翅の尾状突起の有無を確認することが最も重要です。尾状突起があればツバメシジミ、なければヤマトシジミです。さらに、翅を閉じた際に後翅裏側の肛角付近に、鮮やかな橙色とメタリックな青色の斑紋のセットがあるかどうかも、ツバメシジミを見分ける確実なポイントとなります。
これらの特徴を頭に入れて観察することで、身近なシジミチョウの同定がきっと楽しくなるはずです。ぜひ、公園や道端で小さなチョウたちとの出会いを楽しんでください。